今年も季節が街を白く染め始めようとしていた。
今ではその寒さも痛みも心地よい・・・・。

〜冬〜

俺は冬になってから期間限定のバイトを始めた。
なんせクリスマス前だ、割のいいバイトがごろごろしているからな。

なんていうのは建前だ。

俺は感じていたんだ。
何気ない日々が変わっていきそうな予感を。
そして、それを変えていかなければいけないという予感を。

つまり・・・・「告白」だ。

俺は生まれてこのかた告白なんてしたことはない。
どうすればいいかわからないから、とりあえずプレゼントだろうと・・・。
・・・・・・・・われながら非常にベタだ。

それでも恥ずかしくは無かった。
だがその一方で「想い」を打ち明けるのがここまで難しいとは思わなかった。
今更ながら夏樹の苦しみがよく分かったような分からないような・・・。
まぁ・・・・いいか。

あぁ・・・うららか過ぎる昼下がりだ・・・・。
こんな日は散歩するに限るのだが、何故俊彦が一緒にいるんだ・・・。
まぁ、この後バイトだから別にいいんだけどな。
それにしても、うららかだ・・・・。
「おーい、修!」
昼間から声がよく響くな・・・・・・。
「なんだ俊彦、俺のうららかティータイムを奪う気か?」
「うららかティータイムって何だよ・・・?それよりも今日もバイトか?」
「それよりもって・・・・まぁ、バイトだけど?」
それを聞くと俊彦は、ポケットから何かを取り出した。
「ふっふっふっ・・・・そんなお前にこれをやろう♪」
「何だコレ?」
「アメ。」
「・・・・・・・・・・・・。」
見上げる俺。
「・・・・・・・・・・・・。」
本気の目でアメを差し出す俊彦。
「さて、俺は次の授業の準備を・・・・・・。」
「待てぃ!」
いや、俊彦さんよ。アメは無いでしょう、アメは!?
「待てぃ、じゃないだろうが!俺は3歳児かっ!?」
「いや、アメは疲れに効くんだぜ?ここぞと言うときに頑張りたい時期だろう?」
「お前は栄養剤のCMを担当する人かっ!?」
「まぁまぁ、受け取っとけって。絶対役にたつからさ。」
まぁ、別に害がありそうじゃないしな・・・・。
「わかったよ・・・・サンキュ。」
「どうせ、クリスマスに向けてバイトしてるんだろ?」
「なっ・・・!?」
「お前、何年一緒に過ごしてきたと思ってるんだよ?」
「俊彦・・・・・。」
「とまぁ、そういう訳で頑張れよ!困ったら相談しろよ、じゃあな」
俺は手のひらのアメを見つめながら思った。
「ていうかお前と出会ったのは高校に入ってからだ・・・・・。」

「おはようございまーす」
バイトの時間の始まる5分前・・・なかなかナイスな時間帯だ。
「あっ、時野君!その辺今危ないから気をつけ・・・・・・キャーッ!」
「店長?どうしたんです・・・・だぁ!?」
何かに引っ掛って転んだようだ・・・・。
「・・・・・・・何だコレ?」
犬と猫とサルと鳥を足して4で割ったようなモノだぞ・・・・。
「時野くーん、たーすーけーてー!」
「あぁ、はいはい。ただ今!」
駆けつけたそこにはなかなか見られない光景が広がっていた。
「あーぁ、もう何なのよ・・・・痛っ!」
「・・・・・店長、何してるんスか?」
見下ろせば、なぜかビニールテープに巻かれた肢体が・・・・。
「んー、いろいろクリスマスに向けて準備してたらこうなっちゃったのよ。」
「ていうか、今自分がどういう体勢でいるかわかってます?」
「・・・・・時野君からはパンツが丁度見える体勢。」
「・・・・・その通り。」
見えているのは自覚してたのか・・・・。
「あー、もうこんな会話をするなら早く助けてよ!」
「はいはい・・・。」
「変なことしないでね。」
「しませんってば・・・・。」
この人は、バイト先の店長の「春坂奈々子」さん。俺より5つ上だと言う。
なかなかの若店長だ。
「はい、解けましたよ・・・っと。」
「ふぅ、ありがとう。おかげで助かったわ♪」
「まったく、お客さんが来たらどうしてたんですか?」
「あれ?表の看板見てこなかったの?」
「はい?」
オモテノカンバン・・・?
「今日は臨時休業日よ。」
「えー!じゃあ今日は俺休みだったんですか!?」
「まぁ・・・そういうことになるけど、来ちゃったんだから手伝ってよ。」
「・・・・・・・・・・。」 「・・・・・・・・・・時給出すわよ。」 「なら手伝います。」 「まったく現金な子ねぇ。」
手伝いを始めてから1時間程たった時・・・・。
「ねぇ、時野君?」
「なんスかー?」
「時野君の好きなコってどんな人ー?」
「・・・・・・・・なんですって?」
何を仰ってやがりますか、この人は。
「だから、時野君の好きなコはどんな人って聞いてるのよ。」
「何をいきなりやぶからなんたらに。」
「『やぶからぼうに』、でしょ。それにその場合に『いきなり』っていう言葉はいらないわ。」
「ししし、知ってますよ!」
そ・・・そうだったのか。
「ふふふ、まぁいいわ。それよりどうなのよ?」
「ノーコメントで。」
「却下。」
「えええぇ!!!!?」
「そんなの、楽しくないじゃない?」
「ていうか、なんでそんなこと聞くんスか!?」
「この時期に期間限定でバイトに来るコなんてそんなもんよー?」
「・・・・・・・・・。」
よく考えればその通りだ。
「君より長く生きてるとそういうことも手に取るようにわかるのよ♪」
「・・・・・たった5つ上じゃないスか。」
「あら、その5つが大きな差になるんだから。結婚適齢期を迎えた女は怖いわよ〜?」
いや、もうすでにアンタが怖いよ・・・・。
「逆に、店長はそういうことは無いんですか?結婚適齢期がどうのとか言ってますけど?」
「時野君・・・・・何か言った?」
「いえー・・・・・・何でもないっスー・・・・・あは、あははー。」
「まぁ、何にも無い訳じゃないわよ・・・。」
「・・・え?」
「私だってもう23だからねー、恋の一つや二つしてきたってこと。」
「あ・・・・なるほど。」
やっぱり店長にもあるんだなぁ・・・恋バナの一つや二つ。
「でもね、私の両親って医者だからそう簡単にはいかないのよ。」
「・・・・?医者・・・・?」
「そう、小さいけれど院長をしてるの。だから・・・何ていうのかなぁ、世間体ってやつ?」
「はぁ・・・・。」
「まぁ、私自身は医者になるつもりはないからね。頭もよくはなかったし。」
だろうなぁ・・・・・・。
「・・・・時野君、今何か変なこと想像したでしょう?」
「めめめ、めっそうもない!!」
「・・・・まぁ、いいわ。」
まったく、綺麗な顔して隙が無いとは・・・・。

「これでよし・・・っと。」
「店長、これで終わりっスか?」
「そうね、細かいところは明日の朝にでもやるわ。」
「・・・・ところで店長。」
「はいはい、分かってるわよ。時給はちゃんと出すわ。」
「ありがとうございます!」
「今日の分も足して明日渡すから、午後に取りに来てちょうだい。」
「分かりました。」
「じゃあ、今日は帰ってもいいわよ♪」
「お疲れ様でした。」

俺は店を出てから携帯電話を取り出した。
何気にアイツに電話をするのは久しぶりかもしれない、少し緊張するな・・・。

プルルルルルルル・・・・・・・。

「はーい、もしもし。どうしたの、修ちゃん?」
「あ、あのさ・・・・。」
「ん、なぁにー?」
「ゆ、唯って、クリスマスって予定あるか・・・・?」
「えっ・・・・クリスマス?」
「そう、25日の・・・夜でいいんだ。」
「・・・うん、大丈夫だよ。」
「じゃあ、夜7時に駅の前で待ってる。」
「分かった・・・絶対に行くから。」
「待ってるから・・・・じゃあ、おやすみ。」

ピッ・・・・。

「・・・・・・明後日か。」
俺は、気持ちが高鳴るのを少しずつだけど感じていた。

そして、12月25日を迎えた・・・・。

笑顔溢れる聖夜に・・・・涙を流すとは誰が想像しただろうか。
この手で抱きしめたあの時に・・・・・笑えていたなら・・・・。
二人で寄り添って・・・・・笑えていたなら・・・・。

降り積る雪は命の輝き 〜一年〜 「冬」 終了



あー、あとちょっとでプロローグが終わるー。
ちなみに次回がプロローグの最終話らしいですよ、奥さん(ぇ
ていうかここのコメントが何も考えずに一番楽に打てるからいいね。
時々、一行の台詞考えるのに二時間とか掛かるときあるからさー
あー、頑張れ、俺(マテ
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送