私があの時見たのは夢じゃなかった・・・。
瞳に映った情景に、自分を疑った・・・。
あの時に笑顔で話をしていたあいつが・・・泣いていた。

降り積る雪は命の輝き 〜The another view history〜 「雪華」

はぁ、まさか後ろに店長が立ってるなんて・・・・。
「あいつ・・・・教えてくれたっていいじゃない。」
まぁ、教えてもらったのはもらってるんだけど・・・。
「タイミングってものを考えてほしいわ、まったく!」

私はあれから店長に呼ばれ、言葉少なかったがお叱りを受けた。
しかし、普段はきちんと働いてるからか、クビになんてことにはなるはずもなく・・・。
「『今日はもう帰ってもいいわよ・・・。』かぁー。」
まぁ、帰って勉強できるからいいけどね・・・。
これでも、私は勉強は出来るほうだ。
「なんてったって、私は医者になるんだから♪」
だからこそ、学校ではある程度いい子ではいるつもりだ。
「さてと・・・そうと決めたら、帰らないと・・・。」
私は隣の駅の近くに家がある。だから毎回毎回数分の電車に乗らないといけない。
「自転車で来ればいいんだけど・・・バイトの日はめんどくさいからなぁ。」
私は、そんなことを言いつつ駅の方へと足を向けていった。

しかし、駅の前では信じられないことが起こっていた。
「・・・・な、何があったの?」
駅の前ではつぶれた車、崩れ落ちた装飾の数々、焦げ臭いゴムの臭い・・・そして。
「あ・・・・あいつ・・・・。」
私が見たのは、一人の女の子を抱きかかえているあいつの姿だった。
「・・・・い・・・・か・・・な!・・・が・・れて・・・か・・・!」
周りの騒音でよく聞き取れはしないが、何かを叫んでいる。
「あの女の子・・・・・?」
私には見覚えがあった・・・春にあいつと一緒にいた女の子。
「確か・・・・・あの時一緒にいた女の子・・・。」
名前は知らない・・・・だけど・・・・あの子・・・・微笑んでる?
「そんな・・・・今にも・・・・・!」
信じられなかった・・・・間違いなく彼女は自分がもう長くないことが分かっている。

「だ・・いじょうぶ・・・唯はね・・・・ずっと・・・そ・・ばに・・いるから・・・・。」
「・・・・・・!!」
何故か、今の言葉だけははっきりと聞こえた。まるで私にも話しかけているかのような・・・。
「ゆ・・・・・い・・・・?」
それがあの子の名前?
「・・・・ゆ・・い・・・。」
これが・・・・・あの子の・・・・・・名前?

「・・・・・うっ・・・・あっ、あああぁ・・・・!」

「あいつ・・・・・。」
泣いていた・・・・・『ゆい』を抱きしめながら。
もう動かないことは誰が見ても分かるほどに・・・・。
ずっと・・・・抱きしめて・・・・・あいつは、『ゆい』にそっとキスをした。
「・・・・・・・・・。」
私は、その場を動けなかった。
医者になろうと志している人間が・・・・・動けなかったのだ・・・・。
・・・・・情けなかった、悔しかった。
でも、何よりも・・・・怖かった。
今の自分が出て行って、あの状況で何が出来ただろうか?
そんなことを脳裏をよぎったのだ。
「・・・・・・それに。」

「・・・うぅ・・っ・・・・あぁ・・・・!!!」

あんなに強く抱きしめて、泣いているあいつの姿をみたら足が竦んでしまう。
「・・・・・好きだったんだね。」
見ていて分かる。
さっき店に来たときにはなかった首のマフラー。
二人ともに巻かれているところを見ると・・・・あの子のプレゼントなんだろうね・・・・。
「私は・・・入っていけそうに無いよ・・・・。」
でも・・・・・私もそんな風に好きになってもらってみたいよ・・・・・。

「雪・・・・・・?」
気付けば目の前に雪が降っているのに気付いた・・・。
「・・・・・わたし・・・・泣いてる・・・・?」
頬に暖かいものが流れている・・・・・?
雪に気付いて、頬の温かさが余計に増したのだろうか?
わからない・・・。
「・・・・・目の前・・・・見えてないし・・・・あはっ・・あはは。」
きっと顔がくしゃくしゃになってるんだろうな・・・。
私・・・・こんなに泣いたのはじめてかも・・・。

鐘の音が聞こえる・・・今ではここに花が咲いている・・・。

降り積る雪は命の輝き 〜The another view history〜 「雪華」



これは、雪乃が見た12月25日の物語です。
店で会った後、事故の一部始終を見てしまうというもの。
ここで同情に近い念を抱いてしまう雪乃・・・これからは本編に入ってからのお話。
雪乃の過去についてもまだ先の話・・・。お楽しみに。
・・・・やっぱり女の目線って難しいよなぁ・・・。
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